ワイパー

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それは、ある朝の事です。 私は、日課となっている散歩に出掛けました。 五月の空は晴れ渡り、霞のような雲に包まれて穏やかな日差しが気持ちの良い日でした。 ふと見ると、駐車場にたたずむ一台の車が目に入りました。 フロントウィンドウには、居心地が悪そうに「彼」が微動だにせず中途半端な位置で止まっていました。 そう彼は、車の「ワイパー…」 思い起こせば、昨夜は雨だった。 それも、かなり激しく時より嵐の様に雨は横殴りに天から降り注いでいた。 多分車の持ち主は、相当慌てていたのであろう… 車から降りる時「ワイパー」が戻りきるのを確認せずにエンジンを停止させた様子だ。 「ワイパー」は、フロントウィンドウの下側1/3くらいのところで止まっていた。 私に向かって「彼」が呟く… ワイパー「分かってないな…」 私「は?何がでしょう?」 ワイパー「いや、だから分かってないのよ…みんな…」 私「はぁ…」 ワイパー「いったい誰のおかげで雨の中を無事帰ってこれたわけ?」 私「あ!そうですよね!」 ワイパー「だろぉ!」 私「確かにワイパーが無ければ、雨の中、しかも昨日の夜みたいな日は運転どころじゃないもんなぁ」 ワイパー「だろぉ!どいつもこいつも分かってないんだよ俺の真価を」
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