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「だいたい俺は、雀じゃない」
「一羽しかいない上に丸腰だ!」
檻の中には、お決まりの様に「止まり木」が吊るされているが、そんな所に悠長に止まって居られる状況では無い。
檻の側面を飛び移りながら、出口はないかと必死に探す…
その時である!
突然モニタースピーカーから大音量が響きわたる。
びくっ
流れだしたのは…
「小鳥はとっても歌が好き~」で有名な童謡のイントロである。
「歌なんか歌ってる場合じゃねぇ!」
取り乱す小鳥の横に、一人の女が満面の笑顔で近づいてくる…
「お姉さん」である。
イントロが終わると、お姉さんは、暴れ回る小鳥をよそに歌いだす。
小鳥はとっても歌が好き…
「何度も言わすな!」
「俺は今歌なんか歌ってる場合じゃない!」
「そもそも歌は嫌いだ!俺が歌で振られたのを知っての嫌がらせか?」
彼の頭に想いを寄せた彼女の顔が浮かぶ…
刹那!
「お姉さん」が突如檻の中の彼を余裕の笑顔のまま指差す。
反射的に檻の反対側に飛び移る。
「まさかお前…刺身か?」
「刺身で俺を喰う気なのか!?」
檻の片隅に追い込まれた彼の気持ちなど無視する様に、銃口を突きつける奴等に向かって笑顔で歌い続けるお姉さん…
「もしや…」
その姿を見た彼の頭を一つの考えがかすめた…
「こいつ…味方か?」
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