13人が本棚に入れています
本棚に追加
――――16:22。東京、渋谷。
人々の雑踏の中で間の抜けるような雛の鳴き声が響く。同時に明滅し始める歩行者用信号。音と光を確認した女子高校生は携帯を弄りながら歩道で歩みを止め、その傍らを中年サラリーマンが忙しそうに小走りで通り過ぎていく。混み合っていたスクランブル交差点から急速に人が掃けていき、歩行者用信号が青から赤に切り替わる頃には誰もいなくなっていた。そこを車やバスがゆっくりと加速しながら通過していく。
いつもと何も変わらない風景。
これが日本の日常。
ショッピングビルの壁面に配された街頭テレビには、日本から遠く離れた国で起きた事件が映されている。発砲事件に巻き込まれた小学生数名が亡くなったとニュースキャスターが淡々と告げ、人々はそれをただ聞き流す。
どんなに恐ろしい事件だろうが、自分と全く関係ない地で起きたことであり、被害者も加害者も自分とは全く関係ない。興味すら湧かないのだ。
『――――以上でニュースを終わりま……ま、ぁ、あああ』
と、不意に街頭テレビの画面が乱れる。ノイズが走り音声もおかしくなり、女性キャスターの声が途切れた。
何らかの影響で電波が乱れたのだろうか。たまたま近くにいた数人がテレビを見上げて首を傾げるが、まぁこういうこともたまにはあるだろうとすぐに興味を無くして足を進める。
やがて、画面は暗転した。
テレビを見ることができなくなり退屈になった何人かは、携帯電話を取り出してテレビを見ようとする。が、受信した映像もやはり真っ黒。他のチャンネルに回してみても画面に変化はない。
しかも耳にイヤホンをしている人まで怪訝そうな顔をしている。どうやらラジオの電波までおかしくなっているようだ
一体何が起きたのか。
人々が同じ疑問を抱いたその時、画面に変化が起きた。
最初のコメントを投稿しよう!