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ユラユラと、体が揺れる。
まるで宙に浮いているよう…
瞼を開けると、そこには先刻の男の顔があった。
「嗚呼、気付かれましたか?」
「あ…の……、私………」
「疲れたのでしょう、寝てしまわれたので、僭越ながら、運ばせていただいております。」
「す、すみません……重いですよね?
私は大丈夫ですから、降ろしてくださ…」
「嫌です。」
「!!?」
「辛そうに歩く貴方を歩かせるわけにはいきません。男として、嫌なんですよ。」
「………不思議な方…
私なんて放っておけばいいのに……」
抵抗しようとしたものの、眼鏡の奥にある鋭い瞳に私は抵抗なんてできなくなった。
そして、男のなすがままに運ばれている。
「着きましたよ。」
男の言葉に辺りを見渡せば、見知った家…私の家に着いていた。
送ってくださったのに、お礼もせずに帰すなんてできずに私は男を家へ招いた。
私はそれほどまでに、男を信頼していたのかもしれない。
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