私が君を..

7/8
前へ
/46ページ
次へ
私が俯いていると、彼が椅子から立ち上がる音がした。 呆れたのだろう…幻滅させただろう……私は唇を咬みながら彼が出て行くのを耐えようとした。 すると… 「辛かったですね… 苦しかったでしょう……?」 フワリ、と抱きしめられた 温かい人の体温に包まれた… このぬくもりは、いつ以来だろうか? 私は、久しぶりの優しさ、ぬくもりに怖くなった。 私なんかが優しくされていいのだろうか? 老婦人を死なせてしまったのに? 私は彼の体を押し離した。 すると彼は、私の目を見て言った 「もう、独りで苦しまなくていいんだ。 俺が………私が君を赦すから。 君は、罪を償っているし、自分の犯した過ちを悔いている。もう十分です。 泣いていいんです。自分のために、泣いていいんですよ。」 そして再び彼の腕の中に引かれると、私は子どものように、泣いた。 ただただ、泣いた。 初めて、赦された。 それが私の中のいろんなものを溶かしていった。 まるで、長い冬の雪が春の陽で溶けるように…… 彼のぬくもりの中で、涙が枯れるまで、泣き続けた… →
/46ページ

最初のコメントを投稿しよう!

17人が本棚に入れています
本棚に追加