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私が俯いていると、彼が椅子から立ち上がる音がした。
呆れたのだろう…幻滅させただろう……私は唇を咬みながら彼が出て行くのを耐えようとした。
すると…
「辛かったですね…
苦しかったでしょう……?」
フワリ、と抱きしめられた
温かい人の体温に包まれた…
このぬくもりは、いつ以来だろうか?
私は、久しぶりの優しさ、ぬくもりに怖くなった。
私なんかが優しくされていいのだろうか?
老婦人を死なせてしまったのに?
私は彼の体を押し離した。
すると彼は、私の目を見て言った
「もう、独りで苦しまなくていいんだ。
俺が………私が君を赦すから。
君は、罪を償っているし、自分の犯した過ちを悔いている。もう十分です。
泣いていいんです。自分のために、泣いていいんですよ。」
そして再び彼の腕の中に引かれると、私は子どものように、泣いた。
ただただ、泣いた。
初めて、赦された。
それが私の中のいろんなものを溶かしていった。
まるで、長い冬の雪が春の陽で溶けるように……
彼のぬくもりの中で、涙が枯れるまで、泣き続けた…
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