入学

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―――5分後 なんとか羞恥の渦から立ち直った俺は、目の前の少女と今一度視線を交わす。 クリッとした透き通るような空色をしたその瞳と、俺の黒い瞳とが向かい合うこと数秒。 「さっき、何だったのかな?」 「さっき……ですか?」 「あの、ほらさ。俺になんか言いたそうだっただろ、君」 とりあえずそんなことを聞いてみた。 変な思考の渦にいた俺を不思議がって声をかけてくれたのかもしれんが。 「あぁ、そのことですか」 俺の言った言葉の意味に気づいたようで、その子は頭に電球を浮かべた。 「噴水のところに座ってたら同じクラスの人がこっちに来てたので、あいさつしようかなって思いまして」 「あぁ…なるほど」 つまりあれか。同じクラスだと知ってたから、これからよろしくって意味を込めてあいさつしようとしたと。 そうか、それならとくに含むところもないもっともな理由―― 「……って同じクラスだぁあああ!?」 マジかよ! やったよ! やっぱ神様いいやつだな! よし、今度教会行こう。感謝の気持ちって大事だもんな。 「はい、今日のは凄いインパクトでしたので、すぐ覚えちゃいました!」 訂正。神様ハゲちまえ。
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