入学

22/28
前へ
/557ページ
次へ
俺は校門のほうに体を向けて、 「それじゃ、これからちょっと買い物しに行くから。また明日学校で」 片手をあげて、ここから去る。 なんか忘れてる気がしないでもないけど、忘れてるなら気にするものでもないだろう。 「あのっ!」 背後からの少し大きな声にびっくりして、振り向く。 そこにはさっきの女の子が胸の前で指を弄りながら、少し頬を染めていた。うん、凄くいい。 「あの……えっと……」 少々言葉を迷わせ、視線を迷わせしながら、 「その……私もこれから買い物に行こうと思ってたんですけど、ここら辺のことよくわかんなくて、だから、あの……」 そこまで言って、恥ずかしそうに顔を下にむける。 で、そのまま俺を見ようとするもんだから自然に上目遣いになるわけで。 そんでもって最終的に消え入りそうな声で、 「一緒に、行ってくれませんか……?」 こんなことを言われた。 「…………。」 こんなふうに頼まれちゃったら、誰でも行かないわけにはいくめぇ? というかむしろ大歓迎なので、心の中で大喝采しながらコクリと一つ頷いて肯定した。 ぱあっとなんだか無邪気な笑顔になる女の子。それに応じてふわーっと心が和む俺。 ぱたぱたと魔術学園の生徒とは思えない走りで駆け寄ってきた子を伴って、今度こそ俺は校門へと向かった。
/557ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9134人が本棚に入れています
本棚に追加