入学

25/28
前へ
/557ページ
次へ
「お隣りさんだったんですか……」 「俺もビックリだ。けど、これなら荷物部屋まで運んでもよかったろ? ほとんど変わんないんだし」 「そうでしょうか……」 「そうですよ」 そう言って、ここらで話しを打ち切る。あんまり続けると、また怒られそうだ。 「じゃ、また明日。一緒に買い物してくれてありがとう」 俺は持っていたドアノブを逆手に持ち替え、荷物を持ってそのまま身体を室内に滑り込ませる。 そしてそのままドアを閉めようと、腕に力を込めた。 「これから、よろしくお願いしますね」 閉める間際に、ミーシャのそんな声が俺の耳に飛び込んで来る。 「…………。」 やっぱどうも嫌だな、これは。 この際言っておいてもいいだろう。 俺は閉めかけたドアを、もう一度前に押し出した。 外に出ると、ミーシャは荷物を持って今にも部屋に入ろうとしている。 「ミーシャ」 そんな彼女を俺は呼び止めた。 呼ばれたその子はクルリと振り返り、俺のほうに向き直る。 「なんですか?」 「その……さ」 なぜだか少し恥ずかしくなってきたので、何となく頭をかきながら、 「敬語……止めてくれね?」 目の前のお隣りさんにそう言った。
/557ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9134人が本棚に入れています
本棚に追加