入学

26/28
前へ
/557ページ
次へ
どうもさっきからこれが気になってしょうがなかった。 同級生なんだし、敬語で話されると距離おかれてるような気がするからな。 「その……ほら、俺らもうこうして知り合ったわけだし、部屋も隣だしさ。 もっと気軽に接してほしいかなーなんて」 自分でもなんだかうまく言えてない気もするが、伝わりさえすればそれでいいさ。 ミーシャはしばし俺のほうをじっと見つめていたが、やがて 「うん、そうだね。ありがとうシンくん」 そう言って笑った。 やはり、さっきまでは多少なりとも遠慮なんかがあったのだろう。 今回のはホントになんの固さもない、とびきりの笑顔だ。 そして俺は、 「……ッじゃ、じゃあまた明日!」 そう言ってすぐにドアを閉めた。 ありがとうなりなんなり、もっと何か言わなければならないことがあったとは思う。 でも、今の俺にはそんなことを言える余裕なんてない。 (おいおい、なんぞこれ……) 身体が熱い。心臓の鼓動が半端じゃない。 それに加え、鏡で見なくとも分かるほど、顔は真っ赤になっているはずだ。 不意打ちだった。 心が和むとか、休まるとか、そんなんじゃない。 ありゃ凶器だ。主に、男の心に突き刺さる凶器。 「ふぅ……」 危なかった。ミーシャはあれを無意識でやっているのだろうし、その分さらに危険だ。
/557ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9134人が本棚に入れています
本棚に追加