入学

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そんな俺たちを見て、学園長はその視線を一度外す。 そして再び俺たちに目をむけた。 その顔は微笑んでいた。なんとも優しい笑みだ。 「でも、まずは何より一度しかない学園生活ですから、友達をたくさん作って楽しんでください。 あなたたちは今を楽しむのが1番大事なことですから。それを覚えておいてくださいね?」 学園長は、表情に違わぬ優しい声でそう言ってくれた。 俺もその微笑みが伝染したようで表情が緩む。 「それでは、私の話しはこれで終わります。 新入生のみなさん、これからよろしくお願いしますね」 一つ礼をして壇上を降りる。 何て言うか、最後までこの人は美しいままだったな。 まさしく大人の女性だ。 なんとなく俺がその後も学園長への憧れを胸にひめている間に、式はどんどん進行していく。 やがてすべての予定がすんだところで、 「それではこれにて閉会とします。新入生、在校生ともに各教室へと移動してください」 司会の教師の言葉で、一気に大量の生徒が動き出した。 それに少し圧倒されながらも、俺は人の波に逆らわずに動いて講堂の外へと出た。
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