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「君は、私の話を聞いてなかったのか?」
「は……?」
「言っただろう。〝それ〟は、私が討つと」
スフィアの紅い瞳は揺るがず、ただ淡々とそれを口にした。
――やはり、こいつは本気だったのか。
「ふざけるな! さっきも言っただろうが! 死ぬぞ!」
「死なない!」
一喝。
俺の言葉を掻き消すように、普段の彼女ならば決して口にしないほどの大声でスフィアはそう言った。
確か、以前にもこうして声を荒立たせたことが一度あったっけ。
あの時は――そう。俺の記憶について話した時だ。
「死なないさ、私は」
もう一度、今度はひどく穏やかな声で彼女はそう言った。
「だから……頼む。場所を教えてくれないか」
「……一人で行く気か」
「あぁ」
「ちょっとスフィアさん!?」
「アンタいったい何言って……」
「黙っていてくれ!」
もう一度だけ、彼女は声を荒らげた。
今まで沈黙を守ってきた二人の少女の言葉は、それによって完全に四散する。
「俺が同行することは?」
「……すまないがそれはダメだ。私一人でそこへ行く。誰かの同行は、認められない」
「理由は?」
「……言えない。でも、信じてくれ! 私は絶対に死なない! 生きて君たちの元に戻ってくる!
だから―――」
「……分かったよ」
スフィアの言葉を遮り、俺は彼女の前まで歩み寄る。
ほぼ同じ高さ。そこにある綺麗な瞳をしっかりと見つめながら、俺はゆっくりと口を開く。
「お前の覚悟はしっかりと受け取ったよ、スフィア」

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