【一】秘密の片想い

7/21
前へ
/560ページ
次へ
私は机の横に掛けていた鞄を手にとり、玲子と一緒に教室を出た。 グランドを横切ると、サッカー部も練習が終わっていて、雪の降る中、冷たい水で伸がバシャバシャ顔を洗っていた。 うわっ…寒そうだな。 顔まで凍りそうだよ。 伸はまるで犬みたいに、ブルブルと顔を左右に振る。その動作で、顔に付いていた無数の水滴が、私に飛び散った。 「きゃっ!冷たいな」 「あっ、わりぃ、わりぃ。なっ、星良、ハンカチ持ってねぇ?」 「ハンカチ?あるけど…」 「タオル忘れたんだよ。ハンカチ貸して」 伸は濡れた手を私に真っ直ぐ差し出した。
/560ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1881人が本棚に入れています
本棚に追加