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賢志は、あの女子たちが戻ってきたら文句言ってやろうと構えていたが、予想外にも現れたのは女の子一人だったので拍子抜けしてそれを忘れてしまった。
「さっきの女子たちは?」
「えっと、来ません。私が、二人きりになりたいって頼んだから」
「どうして?」
敬語を使っているということは、おそらくは一つ年下の一年生なんだろう。
女の子はモジモジしながら目を下に向けている。よくよく見てみると、その顔は賢志好みの可愛らしい表情をしている。
「実は私……」
女の子は何かを言いかけたが、とっさにそれをためらってしまった。
たちまち二人の間に沈黙の空気が差し込み、先に口を開けない気まずい状況になってしまった。
しかし、女の子はスゥーっと息を吸い込むと、覚悟を決めキリッとした目をして口を開いた。
「わ、私、東雲先輩のことが好きです! 入学したときからずっと」
あぁ、なるほどそういうことか。
まずこの女の子の友だち数人で賢志を屋上に待たせて、自分のタイミングで二人きりになれるようにしたのだ。
そして、心の準備が出来たこの女の子は意を決して賢志に告白をした。
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