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そんな賢志の言葉で我に返った女の子は、慌てて言葉を紡いで口を開いた。
「う、嘘じゃない! 信じます! だって、現に私の心で思っていたこと完全に言い当てたじゃないですか」
「そっか、ありがとう。でもな、俺は普通の人間じゃない。生まれながらの異能者だ。そんな奴といたって、気持ち悪いだけだぞ」
賢志は少し寂しそうな目をして、自傷的な言葉を発したが、対する女の子はぐっと胸に力を込めて言い返した。
「そんなの関係ないです! 私は先輩が良いんです。だって―――」
「嬉しいよ」
そのとき、一瞬だけ強い風が二人の間を駆け抜けた。
女の子の無理やりに紡ぐ言葉を遮った賢志の表情は、とても穏やかな笑みを浮かべていた。
「でも駄目だ。俺は、この力を心から理解してくれる人が現れるまでは恋はしない」
二人の手はまだ繋がれたまま。賢志は触れた者全ての心を例外なく読み取る。
さっき彼が異能者だと打ち明けた瞬間から、女の子の心の震えが止まらない。
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