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賢志が呆気にとられていると、高翼は足音も立たないくらいの軽い駆け足で彼を追い抜いてドアの向こうへと行ってしまった。
「女って、分かんねぇな」
呆然と思わず呟く。
高翼美弥…ねぇ。
おもむろに自分の手の平を見据える。
「―――不思議だな。いないはずなのに、この力を受け入れてくれる人が近い将来に現れそうな気がする」
しばらく立ち尽くしたあと、その場を後にした賢志だった。
「もう少しだからね。あと少しで、あなたに会える。賢志―――」
翼を羽ばたかせながら、天使は小さな雲の上から屋上の賢志を微笑ましく見据えた。
実はその雲がさっき賢志が見ていたものだったり。
賢志を知っているこの少女は、そこからさらに高い空を目で仰ぐと、両手を握りしめて願いをかけた。
「私に残された時間はあとわずか。どうか、人間に生まれ変わって彼と結ばれますように―――」
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