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満月の輝く水面で
終業式の日は昼には放課後になる。何時間も経った校舎のなかは、もうほとんどの生徒が下校し静まり返っていた。
そんななか、保健室では弘行と叶花が未だに目を覚まさない賢志に付き添っていた。
ー 四時間前 ー
「賢志! どうしたんだよ、しっかりしろ!」
「東雲くん! 東雲くん!」
数分前に魂が抜けたようにストンと床に倒れた賢志。叶花がパニックになりそうななか、弘行が体を背負い保健室へと走り出した。
少し後から、叶花も溢れ出しそうな涙をグッとこらえてついて来た。
「頼むから、死ぬなんてことだけはすんなよ」
「ソラ…なのか……」
「は?」
そのとき、弘行は駆けていた足を止めた。
まさか、こんな状況でそんなことはない。そう自分の耳を疑った。しかし次の瞬間、それは紛れもない事実に変わる。
「ん…んん~……ソラ…なのか……」
そう、それは見事なくらいの寝言だった。
「う…嘘だろ?」
しばらくして、後ろから不安そうな表情を浮かべながら叶花が追いついて来た。
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