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(あっ……)
見た瞬間、ユリウスは恥ずかしさに顔を背けた自分を悔いた。
まるで烙印のように十字に付いた火傷はまだ微かに赤みを帯びておりとても痛々しいものだった。
「っ……」
そして何より、視線を感じてか嫌われないかという不安からか肩を小刻みに震わせる彼女にユリウスは胸が痛んだ。
「…塗りますね?」
「うん…」
それでもなるべく不安を煽らないように明るい声調でユリウスは言うと塗り薬の入った小瓶を片手にリリアへの元に行くと
「いきますよ?」
「う、うん…」
もう一度言ってから小瓶の蓋を開け、中の塗り薬を立てた人差し指と中指の指先で掬うように少量取ると火傷の上に静かに乗せた。
「ぃっ…!」
「っ!?…沁みますか?」
「大、丈夫…」
無理して苦笑いを浮かべて言うリリアを前にユリウスは言葉が見つからず静かに火傷に薬を塗っていった。
塗っていく中で触れた火傷や改めて見た周りの傷を前に――
「っ…ぅっ……」
ユリウスは気づかれないように作業を続けながら唇を噛み締め嗚咽を漏らさないよう我慢し、ただ静かに彼女を思って涙を流すしか出来なかった。
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