第十一章 ソレデモ キミヲアイシテル

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* * * 「――本当に申し訳ありません…」 ユリウスの部屋でミュールは深々と部屋の主と一緒にいるエリュシアに頭を下げて謝罪する。 「ミュール、そんなに謝ることはないわ。あなたはリリアを救出したのだから。」 「しかし、リリア様を連れ去られ、怪我までさせてしまうとは…一生の不覚です。」 エリュシアの言葉にも決して頭を上げず悔しげな表情で拳を握りしめながら返した。 「…コリンズ、リリアの容態は?」 「背中に火傷を負ってる以外はないようですので薬としばらく安静にしていれば回復するかと…」 背後にいるコリンズの言葉を聞きつつユリウスは床に膝を着いた態勢で彼女の片手を包むように両手で握りながら見つめる。 上半身に包帯を巻きベッドでうつ伏せに寝かされているリリアを… 「リリア……」 力なく眠り続けているリリアを見つめながら今の彼女に何もしてやれないことに対してユリウスは唇を噛み締める。 「ユリウス、今日はリリアを看病してあげなさい。いつ目覚めてもいいようにね?」 「母さん、ありがとうございます。」 「私は扉の近くにいますので何かあればお呼びください。」 エリュシアとミュールの後にコリンズはそう言うと一礼してからユリウスとリリアの二人っきりにさせる為に部屋を出た。
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