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「時間潰ししようなんて言ってたけど着いた頃には丁度よさそうだな」
外は丁度陽が沈み世界が暗闇に染まろうとしている。
「遠いんだね」
「まぁな。そういえば小さい頃さ、秘密基地って言ってその廃墟で遊んだんだよ。その時も星を見たんだ」
「へぇ、少年時代はお洒落な生活してたんだね」
「ただの悪戯だよ。だけどあの日の空は忘れられない程綺麗だったから星空には自信がある」
「なんか楽しみだなぁ」
少し自転車のスピードを上げてみる。早く行きたいから。あの場所に。
僕も楽しみなのかもしれない。ただ星空じゃなくて京香と見る星空が楽しみなんだ。自転車を立ち漕ぎしてみる。思ったより足が疲れる。だけど大丈夫。目的地はすぐ近く。
人間は楽しみが近づくと自然と表情が和らぐものだ。
「着いたよ」
何もない場所に建つ廃墟は月明かりに照らされてどこか神秘的でファンタジーやSFを想像させた。
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