chapter 4 泡沫とか夢幻とか葛藤とか

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 こちらの世界よりあちらの世界の方が大切な人たちの数は多いけど、みんなは数字じゃないのだから単純な足し算で答えは出せない。 「だったらどうすれば――――なんて、苦悩に悶えるような人間じゃないんだよね、俺は」  既に答えは出ている。俺は自分の意思で向こうに戻る。そして、エーデルとの関係をどうにかする。  殺されかけたアレはまぁ、思春期特有の反抗期だと思っておく。 「…………それにしても、中々最悪な人間だよな」  俺は、実の妹と幼馴染みと、その弟を切り捨てる。もちろんこっちの世界での両親も。  3人には黙って消え、後日手紙かなにかで家には戻らない宣言をしようと思っているが、流石に両親に何も云わないのは拙い気がする。 「色葉ー! 母さんたちは?」  玄関から2階に向かって叫ぶ。 「2人共、お兄ちゃんが居なくなった丁度次の日からお仕事で居ないよー!」  …………まぁ、運が悪かったと思って諦めるしかないな。  それよりも、旅立つ前に男に聞いてみる。 「そういえば、1回こっちに戻った事により、向こうの世界で何か変わる事ってあります?」 「そうだな、我々はあの世界を擬似的に創る事により干渉する事を可能としたからな。――――『dagger』で培った能力は全てなくなると思っていい」  …………うん、何故か向こうの世界に帰りたくなくなったんだが。  まぁ、長年疑問に思っていた、向こうの世界と『dagger』が似ている事についての疑問が解消されただけでもいいとするか。  それに――――もうチートはなしだ。男なら自分の力で戦わないとな。
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