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子供の仕事は勉強だ。なんてバカみたいな常識に従うつもりは無いが、一応学校には通っている。「高校は出ておけ」、ってのが父親の言い分だ、こうも言っていた。
「青春はいいぞ」
殺し屋なんて職業の割には人間味の強い父親だった。殺し屋と言う一点に置いてはそんな生易しいモノ感じられなかったが、きっと猛獣やら化け物の方がまだ優しい。
とにかく俺は学校に通っている。
【私立蔵書高校】
ゾウショと読まれがちだが、読み方はクラガキだ。
高校にしてはあり得ないほどの蔵書を誇る図書館が高校内にあるからだ。
三階建ての立派な図書館。
それ目当てに入学してくるものがほとんど。
とはいえ本と言っても堅苦しいハードカバーのものばかりではなく、マンガ・小説・伝記・ライトノベル・雑誌などなんでもござれ、だ。
だからガチガチの文系さんばかりってわけじゃない。
みんなメガネかって聞かれれば、三割と答える。
普通だ。
しかしやっぱり本が目当てと言う部分は変わらない。
まぁ俺は家から近いって理由で入学したんだが・・。
でも本が嫌いって訳ではない、たまには利用させてもらっている。
図書館三階はあまり利用する生徒もいなくて寝心地は最高だ。・・・こんな風に俺の勉強意欲なんてこの程度、一年間過ごしたが青春のセの字も感じられなかった。
青春ってハードカバーの本と新聞に囲まれて授業をさぼることなのだ!って言われたら納得してしまう。
ちなみにこの三階はさっき言った通りハードカバーの分厚い本と新聞のフロアで、だから人はあまり寄り付かない。
俺も本を探すなら下の階を利用するだろう。
強いて言えば新聞くらいは読む。
最近は同じ記事ばかりだが・・・
《またも被害者!殺人鬼いまだ捕まらず!》
「騒ぐなぁ?たかが殺人で・・」
くく、と笑っていると下階から足音が近づいてきた。
『めずらしいな?ようこそ死地へ。』
なんて内心考えながら階段の方を見据えていた、下階から顔がのぞいた瞬間、眼があった。
その子は一瞬驚いた顔をして、刹那踵を返し行ってしまった。
ここで俺は確信した。
いや革新だったのかもしれない。
人はモノだったはずなのに。
「青春ねぇ・・・」
俺は一瞬眼があっただけの美しく、暗い闇を持つ瞳の彼女を想いながら独りごちた。
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