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訳ありスキンヘッドで鬼のように怖いことから通称¨鬼の坊主¨。
ドスの効いた声で言われれば、みな素直に席につく。
このクラスから不良が出ないのは、この担任の¨せい¨だ。
「おい、入れ。……転入生だ。仲良くしろよ」
ぎろりと睨まれれば、ごくりと唾を飲む。
だが、暁斗は上の空。
呑気に空を眺めていた。
(あ~…面倒臭さい。本読んでるほうがマシ)
「おい、白鳥。てめぇ喧嘩売ってんのか、あ゙ぁ?」
怒鳴りに近い声を出し、鬼怒川の額に血管が浮かぶ。
声だけでわかる鬼怒川の様子。
さすがに危険を感じとった暁斗は、渋々と教卓の方をむく。
「……………え………?」
鬼の坊主の横に転入生が立っている。
ただそれだけのことだった。
暁斗は少し目を見開いて、それをしっかりと見た。
「どうしたんだ?」
暁斗の様子に気づいた莉音が、コソッと声をかけてきた。
それは暁斗の耳に届いた。
届いたが、そのまま反対の耳から抜けてしまった。
暁斗は今、放心状態。
教卓の方にあるそれが、暁斗の心を奪っていた。
緑の黒板に白い文字で¨神崎 千景¨と刻まれてあった。
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