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「泉……頼家……」
「だいじょうぶか? 姉上」
半ば呆然と二人の名を呼ぶと、気遣わしげに、頼家が声をかけてくる。
泉は、寝汗をかいた大姫の顔や首筋を、よく冷えた手拭いで拭い始めた。
「私……?」
「うなされていたんだよ、姉上」
後ろを向いてくださいね、頼家様、と、大姫の夜着の結び目を解き始めた泉に言われた頼家は、姉に後ろ姿を見せながらそう言った。
「そう……」
弟の言葉を聞き、大姫は深いため息を吐く。
体中の力が、抜けていくような気分だった。
泉が体を拭く、ひんやりとした布の感触が、疲れた体に心地いい。
そんな大姫の様子に、頼家も泉も、心配そうな表情になる。
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