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たったそれだけのことしか、知らなかった。
『お婿様と言っても、姫も義高様もまだまだ小さいから、そんなに難しく考えなくてもいいのよ。でも、義高様とは仲良くならないとね』
と、母親は笑いながら自分にそう言ったのだが。
(仲良く、なれるのかなぁ?)
と、大姫は、「こんにちは、姫君」と挨拶してくる義高を見つめながら、そう思った。
まあ確かに、義高は「仲良くしましょうね」と、笑いかけてきた。
母親の言葉にも、笑顔で返事をしていた。
けれど。そう、けれど。
自分と仲良くしようなど、微塵も思っていない目だった。
(義高様は、姫のこと好きじゃないみたい)
それを見て取った大姫は、そう思った。
だから、対面が終わって義高が出て行った後、
「よかったわね、姫。義高様は、姫をかわいがってくれそうよ」
と、母親がうれしそうに言うのが、どうしても信じられなかった。
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