1 まどろみ

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 闇、であった。そこは。  深い……深い、漆黒の闇。  そこがどこにあるのか、誰も知らない。  そこにいる本人達にすら、わからないのだ。  ただ―そこに、彼女はいた。  消えることのない燭台の下、機織機を、動かし続けた。   とんからかっしゃん とんからかっしゃん とんからかっしゃん  とんしゃんしゃん 夢織りしゃんせ通りゃんせ 夢織姫は夢を織る 願い叶わぬ者達の 思いを糸に夢を織る 「夢織姫(ゆめおりひめ)様、大変です!」  その時、暗闇の中、ふいにぽっと光と共に、五歳ぐらいの頭をわっか状態にまとめた男の子が現れた。  そうして、バタバタと、機織機の前にいる夢織姫の前に近づいてくる。 「何じゃ、騒々しい」  そう言って顔を上げた夢織姫は、年の頃は、十三・四歳。愛らしい顔立ちをしていた。  しかし、その黒い瞳は。  その年頃にはふさわしくない、「何か」が、宿っていた。 「生き人(びと)が、迷い込んでおります」 「-生き人が?」  男の子の言葉に、夢織姫は、おやっと少しだけ驚いた表情になる。  ここしばらくの間―と言っても、あちらではどれくらいの時間が経ったのかわからないのだが―この場所に、生き人は迷い込んでこなかった。
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