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「大姫様にとって、頼家様達の存在は、とてもお心の救いになっていたと思います。私の父も申しておりました。『人間は、どんな心の痛みを抱えていても、自分を案じている者や、慕ってくれる者がおれば、生きていくことができる』、と」
「泉……」
「今はお心が混乱しておられますが、だいじょうぶです。きっと、戻って来られます」
そう言った少女の手を、少年は、ぎゅっと握りしめた。
『私は、鎌倉の御所に「お前は好きにするがいい」と言われた時、わかったのだよ。この方にとって、私が生きていようが死んでいようが、どうでもいいのだ、と。実際あの時の私に、死んだ仲間達の仇をとろうとしても、単身乗り込んで、御所の身に一太刀浴びせることもできず、殺されてしまうのが関の山だった。ましてや木曾に戻り、兵を集めようにも、その力も、もはや木曾源氏にはなかった。哀しいぐらいに……私は無力だった』
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