9 まなざし

22/29
前へ
/277ページ
次へ
「千幡様、それは」 「無茶を言うな、千幡。姉上は熱が高いし、意識もない。見舞いは、まだ無理だ」 「う……ん」  だが、少年は厳しい声で男の子を制した。  男の子は、不満そうに少年を見上げる。 「兄様、それはわかっているの。私も、千幡も、ちゃんとわかっている」  そんな男の子の不満を、姉である女の子が、自分の気持ちを交えて、代弁した。 「だったら、わがまま言うな。姉上のお加減がよくなるまで、見舞いはだめだ」 「うん。でも、今回だけはだめなの」 「三幡?」 「三幡様?」  女の子の言葉に、少年と少女は、怪訝そうな表情になる。
/277ページ

最初のコメントを投稿しよう!

399人が本棚に入れています
本棚に追加