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少なくとも、自分はそうだった、と夢織姫は思った。
体が大きくて腕の立つ父と、微笑む姿が優しい母に、守られていた。
それは気が遠くなるほど昔のことだが、ちゃんと覚えている。
なぜ、その子はここに来たのか。
幼子が、どうしてここに来る程の、『思い』を抱くのか。
「あ、来ましたよ」
そう言って、ほおずきが指さした空間に、またしてもポッと、ぼんやりとした光が現れた。
その中から、ほおずきとお揃いの水干姿(すいかんすがた)をした、しかし、髪の毛を後ろで括った一人の男の子が出てきた。
年の頃は、ほおずきと同じで、五歳ぐらいに見える。
続いて、今度は五、六歳ぐらいの、尼削ぎ姿の綺麗な着物を着た女の子が現れる。
大人になれば、さぞ美しくなるだろうと思える、端正な顔立ちをした少女だ。
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