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「うん。義高様はね、木曾(きそ)から大姫の所に来たの。でね、ずっと一緒にいたの。でもね、急にいなくなっちゃったの。だから、大姫は捜しに来たの。ねえ、夢織姫様、義高様は、どこにいるの?」
一生懸命そう言い募る少女―大姫に、ほおずきとやまぶきが、困ったように顔を見合わせる。
夢織姫は、その幼さに似合ぬ光を宿す少女の瞳を、じっと見つめていたが、やがて、すっとしゃがみ込み、大姫に目線を合わせ言った。
「お帰り。ここは、お前のような幼き生き人が来るところではない。早く帰らないと、お前の体が死んでしまう」
「いや、絶対に嫌!!」
なんとか少女を説得しようとしたが、思いっきり拒否されてしまった。
「大姫は、絶対に義高様を捜すのっ!」
そして、ダッと、夢織姫がいる反対方向へと駆け出して行った。
「姫様っ」
「良い。しばらくすれば、戻ってくるであろう。しかし、変な「場」に出るとも限らぬな。ほおずき、悪いが着いてやっておくれ」
「はい」
夢織姫の言葉に、ほおずきが頷き、大姫の後を追って行く。
ほおずきは大姫より外見は幼いが、彼に任せておけば安心だった。
外見で年を判断できないのは、ここでは夢織姫だけではないのである。
「夢織姫様、どうするおつもりですか?」
「さて、どうするかのう」
やれやれという感じで、夢織姫はゆっくりと立ち上がった。
「今までならば、あの手の者は、容赦なく『闇』に送っていたのだが」
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