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―――くあぁ..っ
…疲れたぁ~
あくびと共に大きな伸びをし、ふう.とため息をついた。
此処は、自身の通う大学の講堂。つい先ほど長々とした講義がやっと終わり、あくびをしながらも手は早々と荷物を片し始めていた。
佐々木 巧馬(ササキ タクマ)、19歳。
この春から大学に通い初めたばかりの学生だ。
背が特別高い訳ではないし顔が少し童顔なので、正直まだ大学の中で自分が浮いているんじゃないかと内心ひやひやしている。
大きな黒渕の伊達メガネと、少しブカッとしたキャップ帽で大学生らしい感じを出しているつもりなのだが…
やはりまだガキっぽい感じがする、気がする。
「…巧馬?」
「へ?」
突然頭上から名前を呼ばれ、驚き間抜けな声を出してしまいながら上をぱっと振り仰いだ。
「やっぱり!巧ちゃん、俺だよ!いやぁ~なっつかしいなおいッ!」
見上げた先にいた男は豪快に笑いながら巧馬の背中をばんばんと叩いてきた。
「え?あの、ちょ..」
訳の分からぬ巧馬は必死にこちらの状況を伝えるべく、彼の手を振り払った。
「あのっ」
「あ、もしかして俺が誰か分かんない?」
「あ……はい」
男は「まじかよ~」などと大袈裟にショックを受けながらも笑っているのでどうやらあまり気にはしてはいないらしい。
―――いや、しかし…コイツ……誰?
改めて男をまじまじと見てみる。
男はたぶん巧馬と同じ学年と思われるが、背が高く中々に良いスタイルをしている。いわゆるガテン系..というようなタイプだ。
明るい茶の短髪をツンツンと立てたウルフヘアー風に、いくつか開けられたピアスが不良っぽくも見えるが…
大学生らしくスタイリッシュ且つ大人なオシャレな服装と..何よりもその『爽やか全開!!』的な、二重ながらすっとした目元.整った鼻形.はにかむような口元が、好青年オーラをかもし出している。
――知り合いだったら、こんなイケメン絶対憶えてるはずなのに…
もしかしたら昔は凄く太ってた知り合いとか。いや、全く検討がつかないな。
「…ごめん、やっぱ思い出せない」
お手上げ、という風に巧馬は両手をふらりと上げ.申し訳なさそうに男を見た。
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