シーン1.ある日の平日

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―――同時刻.某所 「ぱーぱ!」 「どうしたの?ルナちゃん」 昼間の人通りの多い駅前を歩く40代の男と、その腕に絡まり甘えた声を出す若い女。 もちろん親子に見えない事もないが、二人は決して血の繋がりがある訳ではない。 「ルナ、今ね、凄く心配なの」 「? どうしてだい?」 沈むように俯く女に男は不安げに顔を寄せ、肩をぐいと引き寄せた。 ――げっ、きめぇなこのオヤジ。  そんな思いとは裏腹に、女は上目使いに男を見やりながら 「だって幸せ過ぎるんだもん!」 「ええ?」 「実はルナね..心配かけたくないから内緒にしてたんだけど、本当のルナのぱぱは、ずぅっと前に死んじゃったの」  見え透いた嘘を吐く。 が、尚も男は変わらず女を見詰めている。 「だからね、今こうして大石さん..ううん、ぱぱとこうして歩いてるのが、本当に幸せなの」 「ルナちゃん…」 「ルナ、いくつか夢があったんだぁ。 一つは、こうしてぱぱと歩くこと。もう一つは、本当の親子みたいに一緒にお買い物とかして、プレゼントとかを買って貰うこと。そして… ぱぱみたいな優しい人に、"色んなこと"を教えて貰うこと」 女の唇から吐かれた言葉に、男の喉を唾がゴクリと流れた。 肩を掴んでいる手の平が汗ばむ。 「よ..よよ、よし! じゃあルナちゃん、今日はぱぱがルナちゃんの夢全部叶えてあげるよ!!」 「ほんと?嬉しい!ありがとうぱぱ! それじゃあ、あのお店行っていーい?ルナ、バックが欲しいの」 女は興奮する男の腕を引きながら、軽い足取りで目前の高級ブランド店へ歩み出す。 ―――ばーか。 本番は契約違反って憶えてねぇのかよ。 …バックの次はどうしよう。あぁ、この前のカモで逃したあのアクセを買わせよう。 そんな事を考えながら歩いていると、自分よりも5㎝程小さい少女にぶつかった。 「いたっ!」  「おっと」 何すんのよ、と噛みつこうとして相手を見ると… .
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