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―――同時刻.某所
「ぱーぱ!」
「どうしたの?ルナちゃん」
昼間の人通りの多い駅前を歩く40代の男と、その腕に絡まり甘えた声を出す若い女。
もちろん親子に見えない事もないが、二人は決して血の繋がりがある訳ではない。
「ルナ、今ね、凄く心配なの」
「? どうしてだい?」
沈むように俯く女に男は不安げに顔を寄せ、肩をぐいと引き寄せた。
――げっ、きめぇなこのオヤジ。
そんな思いとは裏腹に、女は上目使いに男を見やりながら
「だって幸せ過ぎるんだもん!」
「ええ?」
「実はルナね..心配かけたくないから内緒にしてたんだけど、本当のルナのぱぱは、ずぅっと前に死んじゃったの」
見え透いた嘘を吐く。
が、尚も男は変わらず女を見詰めている。
「だからね、今こうして大石さん..ううん、ぱぱとこうして歩いてるのが、本当に幸せなの」
「ルナちゃん…」
「ルナ、いくつか夢があったんだぁ。
一つは、こうしてぱぱと歩くこと。もう一つは、本当の親子みたいに一緒にお買い物とかして、プレゼントとかを買って貰うこと。そして…
ぱぱみたいな優しい人に、"色んなこと"を教えて貰うこと」
女の唇から吐かれた言葉に、男の喉を唾がゴクリと流れた。
肩を掴んでいる手の平が汗ばむ。
「よ..よよ、よし!
じゃあルナちゃん、今日はぱぱがルナちゃんの夢全部叶えてあげるよ!!」
「ほんと?嬉しい!ありがとうぱぱ!
それじゃあ、あのお店行っていーい?ルナ、バックが欲しいの」
女は興奮する男の腕を引きながら、軽い足取りで目前の高級ブランド店へ歩み出す。
―――ばーか。
本番は契約違反って憶えてねぇのかよ。
…バックの次はどうしよう。あぁ、この前のカモで逃したあのアクセを買わせよう。
そんな事を考えながら歩いていると、自分よりも5㎝程小さい少女にぶつかった。
「いたっ!」
「おっと」
何すんのよ、と噛みつこうとして相手を見ると…
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