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◇ ◇ ◇
職員室に到着するやいなや、一つの箱の前に立たされた。
「さ、クラス決めようか」
目の前の箱をポンと叩き、何でもないことのように、そう告げられる。
「……はい?」
まさかとは思うが、今、クラスを決めようと言われたのだろうか。……この箱で。
なんの変哲もないただの箱だ。青色で、上部に手を入れれそうな丸い穴が空いているが……。
「これはもしかして、く……」
「そう。くじ引きです」
法月とは別の声が、くじ引きだと言いきった。
声の方に視線を向けると、温厚そうな男子生徒が立っている。
(誰だ?)
「初めまして。自治会の会長をしている、百武<ももたけ>です」
疑問が顔に出ていたのか、その生徒はにっこりと笑い、簡単に自己紹介する。
「はぁ」
彼が誰だかはわかった。しかし、彼はなぜここに居るのだろう。
「彼は立会人ですよ」
「立会人……」
「クラスを決める過程で不正が行われないように、生徒代表で見届けるんです」
「不正……」
クラスを決めるのに不正。何のために。誰が得をするんだ?
「まぁ、疑問は後ほど誰かに説明してもらうとして、くじ引いてしまいましょうか」
説明責任を丸ごと「誰か」に押し付けて、法月は箱を俺に近づける。それでも教師か。
俺はワケがわからないまま、箱に手を入れ一枚の札を取り出す。
「……八」
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