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混乱が治まらない教室と俺を置き去りに、やっぱり法月はマイペースだった。
「取り合えず、静かに~。六田君の席は……三枝<さえぐさ>さん」
はい。と、呼ばれた生徒が手を挙げた。肩位まで髪を伸ばし、細身のフレームの眼鏡をかけた、しっかりしたお姉さんタイプの女子生徒だ。
「六田君。彼女の隣が君の席だから」
俺は示された席に向かった。窓から二列目の後方の席だ。
「三枝です。よろしく」
「よろしく」
彼女はそんなに驚いた様子ではないが、今でも教室全体にわずかにざわめきが残っているし、あちこちから視線が突き刺すように飛んできている。
「私、このクラスのクラス委員なの。わからない事があったら、なんでも聞いてね」
「わかった。ありがとう」
彼女に対して最初に受けた印象は、あながち間違っていなかったらしい。
俺は少し迷ったが、この状況に関して聞いてみることにした。
「…早速なんだけど、このクラスの異様な雰囲気は何? 転校生ってそんなに珍しい?」
「う~ん…。その話は長くなるから、また後でね」
原因がわかっても、しばらくはこの状態続くだろうし……。
と、後半、独り言の様に呟いて、彼女は何事かを考え込んでしまった。
やっぱり謎だ。俺の疑問は増すばかり。
(……本当に来る学校間違えたかも)
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