S-8

2/6
1032人が本棚に入れています
本棚に追加
/451ページ
泣いたのは、最初から気付いてた。 『碧君…?』 温もりを感じるような、橙色に包まれた部屋の明かりにキラリと輝る彼の瞳。 前触れの無い涙に動揺を隠せず、無遠慮に眺めてしまった。 『ん、なんでもない、…眠くて』 そう応える彼の眼はごまかせない程に潤んでいるというのに。 俺を気遣っているのか。 寝よう、と告げると強引にベッドへと向かって行ってしまった。 シーツを頭から被って。小さく体を丸める。 『…もう、寝るの…?…碧君』 手を伸ばせば届く距離で。なのに妙に空間を感じる背中に向かって、そっと声をかける。 …泣いて、…いるんでしょ? 必死に隠そうとしてる貴方の背が、ふるえてるよ?
/451ページ

最初のコメントを投稿しよう!