【愛する】とは?

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そんな【自己犠牲の愛】を描いた作品が遠藤周作の『私が棄てた女』だ。 私の最も好きな作家の作品だ。 熊谷啓監督で『愛する』というタイトルで映画化もされたが、原作よりかなりソフトなイメージになっていて残念だった記憶がある。 その小説の主人公は森田ミツという名で、他の作品にも度々似たキャラで登場する作者お気に入りのキャラクターなのだ。 どの作品にも共通しているのは、どんくさくて、不細工で、バカがつくほどのお人好し。 だから、男に棄てられたり、裏切られたりするが、ミツは変わらず相手を想い続ける。相手を想って、自分から身を引いたり、ツラいことも我慢したりする。 作者はいろんな作品にミツを登場させて、そして彼女の内なる聖女的なものを描こうとしていた。 しかし、それは小説の中の話。現実には有り得ない。そう思っていた。 だって、男女の仲でどちらかが犠牲になるなんてフェアじゃないし、そんな恋愛はしたくない。と私は思っていた。
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