思い出はもう段ボールにしまわれて

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 おばさんの用は大したことじゃ無かった。消費しきれない食品の整理と、息子の幼なじみへの挨拶。  隆彦と少し似てる顔がにっこり笑って、私の腕に野菜やら何やらが入った小さな段ボールを押し付ける。あの馬鹿の笑顔は、どちらかと言うとおじさん似かな。  おばさんとの会話もそこそこに玄関へ戻ると、もうそこには馬鹿の姿は無かった。玄関脇の階段を登って、すぐ右の部屋にノックもせず入る。  隆彦は大きなクマのぬいぐるみを抱えて唸っていたけど、私に気付くと恥ずかしそうに笑って言った。 「くーちゃん、どうしようかと思って」  懐かしい。小さい頃は自分たちの身の丈程もあるクマ――くーちゃんと一緒に2人でよく遊んだ。
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