思い出はもう段ボールにしまわれて

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 足元に段ボールを置いて、隆彦が座っているベッドに勢いよく腰掛ける。何年も荒っぽい使い方をしてきたせいか、バネはすっかり弱っているようであまり弾まない。  窓から入る風が気持ちいい。馬鹿は相変わらずくーちゃんと睨めっこしていたから、試しに言ってみた。 「じゃあ、くーちゃんちょうだい」 「えー、気に入ってるんだけど……って、凛ちゃんからのプレゼントじゃん、もともと」  まあその通りなんだけど。クマを抱える間抜け面を見ていたら、何とも言えない気持ちになって。  ……気まぐれであげただけなのに、大切にされてるクマが少しだけ羨ましくて憎らしかった。 「じゃあ、次会った時返す」  自分でもびっくりする程に当てのない約束。隆彦は一瞬、何故か酷く傷付いたような顔をしたけど、すぐに笑顔になってクマを差し出してきた。  その顔がずっと目の裏から離れなくて、胸が痛んだ。
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