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出来る限り湿ったシャツに触らないようにして、のんびり動く景色を眺める。
もしかして、このズボンの下には私が付けた青痣があるのかしら。だとしたら、こいつはやっぱり愚か者。
大方、私が気にするとでも思ったんだろう。だからすぐ家には来なくて、でも痣が消えるまで待てなくて……といったところか。
だからって暑いのに足を隠して来るなんて、頭がおかしいに違いない。
「凛ちゃん、暑いよ」
なんだか顔が緩んでしまって、やつの背中にしっかりとしがみつく私も、この熱気に頭をやられているには違いないけど。
ばくばくと音を立てる熱い背中と、帽子を攫おうと狙う風が心地良い。そう、心地良すぎたんだと思う。
「海、連れてって」
気がついたらそうねだっていた。ここから海なんて、自転車で行ける距離じゃないのに。
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