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なのにこの馬鹿は、海行こうかなんて喋ってる。行けるわけないじゃない。もう二週間しか無いんだから。
「嘘。バーカ」
こいつなら行きかねないから、優しい私はそう言ってあげた。バカ呼ばわりされても、馬鹿はただ楽しそうに笑ってるだけ。
突然、自転車が止まった。辺りを見回すとそこは古い家が立ち並ぶ町中で、これと言って見るべきものも無い。
「こっち」
自転車を道端に放置して、隆彦は狭い塀の間を歩いて行く。何がしたいんだこいつは、と思いながら後を追う。
塀を抜けると、私たちの背程もある葦で視界が埋まった。先導していたあいつを見失いそうになって、少し不安になってたら馬鹿が戻って来て手を差し出した。
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