五日後に会ったら口が言うことを聞かなくて

4/6
前へ
/26ページ
次へ
 なのにこの馬鹿は、海行こうかなんて喋ってる。行けるわけないじゃない。もう二週間しか無いんだから。 「嘘。バーカ」  こいつなら行きかねないから、優しい私はそう言ってあげた。バカ呼ばわりされても、馬鹿はただ楽しそうに笑ってるだけ。  突然、自転車が止まった。辺りを見回すとそこは古い家が立ち並ぶ町中で、これと言って見るべきものも無い。 「こっち」  自転車を道端に放置して、隆彦は狭い塀の間を歩いて行く。何がしたいんだこいつは、と思いながら後を追う。  塀を抜けると、私たちの背程もある葦で視界が埋まった。先導していたあいつを見失いそうになって、少し不安になってたら馬鹿が戻って来て手を差し出した。
/26ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加