1日目

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「おい、ウメジンタン!」 その声は予想以上に駅に響いて、一気に顔が熱くなる。 まわりの人間はヒソヒソと笑いつつ、忙しそうに歩き始める。 僕は、ポケットにつっこんだ携帯を取り出し、パーソナルデータのページを開く。 彼女は、まだ信じられないような顔つきで、こちらを凝視している。 構わず、柵ぎりぎりまで歩み寄ると、彼女も寄ってきたので、安心やら後悔やら、羞恥やらで、泣きたくなる。 ウメジンタンの叫びを聞いた人間は、たぶんもう駅員しかおらず、また朝の喧騒が戻る。 「……んっ!」 黙って携帯の画面を見せる。 彼女は、恐々と携帯を覗き込んで、目を細めた。 長めの髪を、軽く片手で押さえる動作が、一々絵になる。
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