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4月には珍しい大雨の中、僕は寒さに震えながら、バス停に立っていた。
時刻、5時。
まだ鶏も鳴いてない、そもそも起きてすらいないであろうこの時間、れっきとした人間のこの僕は、起きていた。
これに乗り過ごしたら、次は8時だから!
そんな苛立ちを、屋根のないバス停の隅に吐き捨てる。
「……上京してー。」
僕が生まれたのは、山の横。
比喩とかじゃなく、本当に山の横。
母さんと父さんは、出産直前まで家で農業を営み……、
間に合わなくなって、村の助産婦を呼んだ。
町、じゃないからね。
村。
なんせ、1番近い病院まで、普通の車で3時間。
そもそも、父さんの車、トラクターだから。
そんなこんなで、三軒隣のタエさん、85歳を呼んだそうだ。
なんと、無免許。
何故助産婦を名乗るのか、聞いてみると、
「あたしゃ、誰かぁ、生まれよる時に、助けようよ! 産まれる、助ける、婦人、で助産婦やけー、かっこよかやろー!」
だそうです。
まぁ、それぐらい田舎。
初めて都市を見たのは、中学の修学旅行である県を訪れたとき。
その時にみた、高層ビル、マンション、ゲームセンター、観光スポットの数々……。
その憧れの中に、一際輝く建物があった。
塔斗大学。
一瞬で希望校が決まった。
中学の先生には笑われ、高校の先生には止められた。
『行けるはずなかぁ。何浪する気ね?』
僕はなけなしの根性と、人一倍の反発力で塔斗大学農学部に入った。
ただ1つの問題、それが通学。
入学式前日、僕はバスのダイヤを調べ、
叫んだ。
1人暮らしする余裕はない。
金銭的にも、生活力的にも、だった。
こういう訳で、僕は5時から、大学に通う。
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