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バスを降りると彼女はもう、駅の建物に入るところだった。
「やばっ、名前、何だったっけ?」
焦ればあせるほど、記憶が消えるみたいに名前が出てこない。
やばい。
改札をくぐってしまったら。
僕の定期では、追いかけられない。
名前。
名前、誰だっけ。
走って駅の建物に入る。
改札に、定期をかざす、彼女。
とりあえず、あの足を止めたい!
僕が叫んだ、魔法の言葉。
「おい、ウメジンタン!」
駅にいた人間全員が、そりゃもう驚きの顔で振り返った。
だって、駅で、ウメジンタン!
振り返った彼女が、目を見張る。
どんな恥をかいたって、彼女の足が止まれば。
僕は、正しい道を選んだと言える。
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