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「ちょっとあんた何しに来たのよ!まさか、さっきの試合の仕返しにでも言いに来たの?」
彼女は光の言葉を無視してじーっと俺の方を見てくる。
「な、なんだ?用があるんだったら、早く言ってもらった方が助かるんだが‥‥」
「僕の名前は雑賀鈴(さいか りん)と言います。今日の試合、お見事でした‥‥」
「お、おう。ありがとう」
「それで‥‥あの‥‥その‥‥」
鈴は照れくさそうにモジモジしながら何かを言いたそうにしている。
「どうした?言いたいことがあるんだったら言った方が良いぞ?」
「や、やっぱり何でもないです!!」
そう言うと彼女は女子寮への道をすごい速さで駆け抜けていった。
「なぁ光」
「なに?」
「あの子何を言いに来たんだ?」
「知らない」
ですよね。
「じゃあ光、今日はこの辺で」
「うん。また明日」
俺は光が見えなくなるまで見送ってから男子寮へと向かった。
――――――――――――――
ど、どうしよう!?
彼女は一人、自分の部屋で悩んでいた。
あぁやっぱりさっき言っとけば良かった!
彼女、もとい鈴はさっきの会話の中で一閃に言いたいことがあったのだ。
でも、あの雰囲気じゃ言えないよね‥‥先輩に憧れてこの学園に入学したなんて‥‥
試合の時はあんな態度をしたからもしかしたら嫌われてるかも‥‥
鈴は自分の中で何度も何度も同じことを考えては、ああしとけば良かった、こうしとけば良かったと、後の祭り状態だった。
で、でも。まだ入学したばかりだし、チャンスはまだあるよね!うん、きっとそうだ!
そうと決まったら夕御飯でも食べにいーこおっと。
鈴は気持ちを切り替えて寮の食堂まで向かった。
そのころ
「うーん」
一閃は一人首をかしげていた。
「この貼り紙は一体‥‥」
部屋のパソコンにそれは貼られていた
そこには達筆な字で『22時に、盛大なパーティーを行う。楽しみにしてな」
してな。って‥‥
それにこの字は多分、校長先生だろう。
「22時か、まだ3時間あるな」
どうせ暇だし食堂に行くか。ついでに光も誘って。
俺は私服に着替え、自分の部屋の鍵をかけ、女子寮へ向かう。
ついでに女子寮と男子寮の間に食堂があり、そこへは渡り廊下でそれぞれの寮からつながっている。
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