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あの日以来聞いていなかったあの人の聲。
はっきりと覚えている訳じゃなくて曖昧。
だけど、僕を呼んでいるのならきっとそうだ。
僕は声の聞こえた方へと歩み寄ると、あの時あの人が居た祠があった。
祠に近付き中を覗き込む。
月明かりだけが頼りなので覗き込むと自分の影で見えない。
「ねぇ、何処に居るの?」
“━━…こっちへ‥”
聞こえた聲に辺りを見渡すが、人が居る気配がない。
祠の後に回り込むとそこには二匹の狛犬が、表側とは違い向き合う形で建っていた。
不思議に思い狛犬に近付き触れてみる…‥と、突然狛犬の瞳が紅く光りを放つ。
━━…ギィー‥ギ‥ギギ……‥ガゴン
お座り状態だった狛犬が動き出しみるみる内に伏せの状態に変わった。
━━…ザバーーーッ
水が流れ落ちる様な大きな音が泉の方から聞こえた。
慌てて走って行くと、祠の手前の泉がおよそ4・5メートル程に割れ、下へと続く階段が姿を現していた。
“━━…私は此処に‥”
月が照らす中、階段の奥から聞こえる聲に引き込まれるかの様に僕は迷わず足を踏み入れた。
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