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暗闇ノ炎
━━━…ぴちょん…‥ぴちょッ‥ぴちょん…‥
滴り落ちてくる水の音が薄暗いこの洞穴に響く。
階段を降り進むにつれ、地上からの光は遮られ段々と暗闇が濃くなってくる。
上を見上げれば泉の水を透かし月の光が差し込んで来るのが見える。
先程の入口は僕が入るなり閉じられてしまった。
下から見上げても出入口が有る形跡は無く、触れてみるとひんやりと冷たいのだが水の感触とは違い、透明な硝子に触れているような感じだった。
階段を降り切る頃にはライトの着いていないトンネルの様な薄暗さで、木の根が岩や土からはみ出している穴が続いている。
━━━…コツン‥コツン‥
規則正しく足音が響き、不規則な水音が兒玉する。
これ以上進むと流石に暗闇に慣れたとはいえ、暗過ぎて見えないんじゃあ…‥と思うと同時に、不意にぽぅっと明るくなった。
ソコに視線を向けると、壁から突き出た棒の先から吊された鳥籠の様な入れ物の中を、ふよふよと小さな炎が浮かんでいた。
奥に進むとソレは一定の間隔で左右ちぐはぐに付いており、次の炎が着いては前のが消えるを繰り返していた。
奥から吹く風では消えない炎が不気味で、自分の足音でも水音でも無い、生物の走る音や鳴き声…‥石が崩れ落ちる音に恐怖を覚えながら、漸く開けた所に出ることが出来た。
円状の陸地を囲む翡翠の様な色の水が光を放っていて、とても神秘的な光景。
その陸地の中心からは、蝸牛の殼の様な形をした大きな器が浮かんでいた。
“━━…何をしているのかな?”
「ッごめんなさい!!!」
僕がソレに触れようとした時だった。
突然聞こえた聲に思わずビクッと身体が反応し、反射的に謝ってしまった。
“どうやら驚かせてしまったようだね”
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