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あれからどれだけ泣き続けたのだろう。
流す涙も枯れ果てるころには周りの人もいなくなり、日も傾き始めていた。
それからは僕は吐く言葉もないままただ呆然と座り込んでいた。
憂はそんな僕に何も言わず傍に居てくれた。
長い沈黙が続く中、僕はスっと立ち上がった。
「…‥まだ、生きてるかもしれない…」
「…‥。」
「…‥僕‥会いたい…‥」
連れ去られたばかりという微かな希望に呟いた言葉に幼なじみの眉間に皺が寄る。
少し間を置いた後、憂の唇がうっすらと開いた。
「…‥残された者が会いに行くのは禁忌だって知っているだろう」
低く篭るような声で僕を見上げて呟いた。
「でもっ…」
涙は先程全部流れ切ったと思ってたのに、瞳に涙が浮かぶのが解った。
「お前が行けば、例え会えたとしても喰われるだけだ。ソレにまた別の家が犠牲になるだけだ」
憂は静かに…‥だけど力付く真剣で、そんな声とは裏腹に荒々しく床を拳で殴った。
ベキッ!!!‥っと大きな音を立て床の板が割れた。
「解ってるよッ…‥でも‥こんなの間違ってる。鬼に選ばれるのが名誉なんだって…‥良い事なんだってずっと思ってた。…ッでも…‥」
憂と目を合わす事が出来ず、割れた床を見つめる。
「俺はお前まで失いたくない」
その言葉に僕は、憂の過去を思い出した。
憂は僕よりも幼い頃に鬼に家族を奪われているから。
でも僕と憂とは違う!
憂の家が鬼に襲われたのはもの心がつく前…‥だから憂は家族の思い出がない。
どんなに大切かなんて憂は知らないんだ!
「家族なんて知らないくせにっ!!!」
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