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…悔しい
風に舞う桜の花びら
何故私は…
空は青天、虚しくなるほど雲一つ無い。
私は私なんだ…せめて
ごつごつとした固い樹の幹に方手を添える。
せめて私が強かったら…男だったら!!
添えた手をぎゅっと強く握りしめた。
掌に爪が食い込むが、そんなことは気にならない。そんなことでこの胸の痛みは治まらない。
強くなりたい!…誰よりも
顔を歪ませ、拳をますます強く握りしめる。
「……――っ!」
駄目だ…私はどうしてこんなにも…
声にならない嗚咽をもらし、静かに流れ出した涙。
何かが決壊してしまったように涙は後から後から溢れだし、乾いた地面にぽつりぽつり黒いシミを作っていく。
…苦しい…悔しい…………………………………………悲しい
堪らずしゃがみ込み、顔を両手で覆った。
袴の裾が汚れてしまう、とちらと思ったが、こんな情けない顔を誰かに見られるよりはずっとましだった。
此処は皇の者しか立ち入れない城の最奥だし、そもそもこんな断崖絶壁に古い桜が一本立ってるだけなんだ。
誰も来るはずはないのだが、今はこの桜にも、遥か上空を飛ぶ鳥達にも、暖かな日差しをくれるお天道様にさえ顔を見られたくなかった。
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