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「…う……っく」
必死に声を押し殺すが、息を吸う度に小さな嗚咽がもれてしまう。
あぁ…嫌だな…私はこんなにも弱いなんて…
うずくまり、丸まった小さな由衣の塊は、樹齢100年を越えるどっしりとした桜の幹に寄り添っている。
この桜は本当に崖っぷちに立っていて、崖の途中から根が露出してしまっていたりするのだが、そんな自身を取り巻く環境をものともせず、毎年立派な桜を誇らしげに咲かせる。
そんな姿に感銘を受け、由衣が幼少の頃より立ち直る為のよりどころとなってくれていた。
だから今日も此処に駆け込んだ。
―――由衣様は姫君
―世継ぎには由馬様が――
――何故女子だったのか―
―婚姻は我等が―
―冗談ではないぞ―
―やはり御霊憑(みたまつき)では――
――――なんと危険な―
――いずれ災いが降り懸かる―
やめろ…思い出すな…
強く唇を噛み締めると、由衣は頭を振った。
頬を伝う涙がふるい落とされたが、またすぐに別の涙が流れ落ちていく。
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