青い眼

3/11
前へ
/228ページ
次へ
「…う……っく」 必死に声を押し殺すが、息を吸う度に小さな嗚咽がもれてしまう。 あぁ…嫌だな…私はこんなにも弱いなんて… うずくまり、丸まった小さな由衣の塊は、樹齢100年を越えるどっしりとした桜の幹に寄り添っている。 この桜は本当に崖っぷちに立っていて、崖の途中から根が露出してしまっていたりするのだが、そんな自身を取り巻く環境をものともせず、毎年立派な桜を誇らしげに咲かせる。 そんな姿に感銘を受け、由衣が幼少の頃より立ち直る為のよりどころとなってくれていた。 だから今日も此処に駆け込んだ。 ―――由衣様は姫君 ―世継ぎには由馬様が―― ――何故女子だったのか― ―婚姻は我等が― ―冗談ではないぞ― ―やはり御霊憑(みたまつき)では―― ――――なんと危険な― ――いずれ災いが降り懸かる― やめろ…思い出すな… 強く唇を噛み締めると、由衣は頭を振った。 頬を伝う涙がふるい落とされたが、またすぐに別の涙が流れ落ちていく。
/228ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加