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由衣が生まれ育ったこの日ノ見国は、古来より男子が統治してきた王制国家である。
血筋の関係か、皇家の直系には代々ほぼ男子のみが生まれてきた。
千五百年以上にわたる日ノ見国の歴史のなかで直系に女子が生まれたのは過去数度だけ、最後は200年近くも前の事で、彼女は20歳という若さでこの世を去っている。
しかも殆ど決まって姫がいた数十年の間に国が大飢饉、流行病、自然災害に見舞われる。
その上に決まって災呀と呼ばれる獣が大量発生し、人口が大幅に減り国中が地獄絵図のようだったという。
以来人々はこう口にし続けた。
―皇家の女子は凶児、と。
由衣が誕生した日は国中が大騒ぎだったという。
幸か不幸か由衣が誕生してから18年、これといった国害には見舞われていない。
ただ周りからは腫れ物のような扱いを受けてきた。
先程偶然耳にした、由衣の尊権を無視するような家臣達の会話がそうだった。
構わない…慣れているだろう…
そう自分に言い聞かせた。
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