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さて、冒頭の女の話に戻ろう。
女はとても美しかった。
ただ美しいだけではなく、どこか愛らしさ、艶やかさを持ち、どんな男も振り返る、どんな女も羨み嫉む、そんな見目をしている。
女は物心つく頃にはそのことに気づいていた。
口八丁手八丁に、人を騙し、物を盗んだ。
どんなお人好しを騙しても、どんな貧しいものから盗んでも気を咎める事はなかったし、むしろ不幸になる人間を嘲笑いさえした。
いつか従民から抜け出し、この腐った町を高見から見下ろしてやろうと心に決めていた。
そして、自分にはそれを成し遂げる才能があると自負していた。
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